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線形位相フィルタ

cremezを除き、すべてのFIRフィルタ設計関数は、線形位相フィルタのみを設計します。このようなフィルタの係数の数、すなわちタップ数は、偶数または奇数の対称関係に従います。この対称性や、フィルタの次数nが偶数か奇数かに応じて、線形位相フィルタ(長さn+1のベクトルbに格納されます)は、その周波数応答に関して特定の固有の制限をもっています。

線形位相フィルタタイプ

フィルタの次数  n



係数の対称性


応答 H(f), f = 0


応答 H(f), f = 1 (ナイキスト)

I 型
偶数
偶数


制限なし
制限なし
II 型
奇数
制限なし
H(1) = 0
III 型
偶数
奇数


H(0) = 0
H(1) = 0
IV 型
奇数
H(0) = 0
制限なし

線形位相FIRフィルタの位相遅延および群遅延は、周波数帯域全体にわたり等しく、かつ一定です。n次線形位相FIRフィルタの場合、群遅延はn/2であり、フィルタ処理した信号は単にn/2ステップで遅れます(また、そのフーリエ変換の大きさは、フィルタのゲイン応答でスケーリングされます)。この特性により、信号の波形は通過帯域内で保持されます。すなわち、位相歪みは生じません。

関数fir1fir2firlsremezfirclsfircls1、およびfirrcosは、すべて、デフォルトでI型およびII型の線形位相FIRフィルタを設計します。firlsremezは共に、'hilbert'または'differentiator'フラグが付けられるとIII型およびIV型の線形位相FIRフィルタを設計します。cremezは、任意のタイプの線形位相フィルタだけでなく非線形位相フィルタも設計することができます。


 FIRフィルタ設計 ウィンドウ法