Real-Time Workshop User's Guide | ![]() ![]() |
ターゲット環境
図 1-1 は、Real-Time Workshopがサポートするターゲット環境のタイプを示したものです。
組み込みターゲット
カスタマイズ可能な組み込みリアルタイム(ERT)ターゲットは、ワークステーション上で組み込みコードフォーマットで生成されたコードを起動するランタイムインタフェースファイルで構成されます。ERTターゲットは、メモリに制約のある組み込みアプリケーションに対して最適です。AdaバージョンおよびCバージョンのERTターゲットが提供されています。
デフォルトの構成では、ERTターゲットは、カスタム組み込みアプリケーションのターゲット化の開始点として、また、生成コードを確認することができる方法として設計されています。カスタム組み込みターゲットを作成するには、ERTランタイムインタフェースファイルから開始し、ターゲットに対して必要に応じて編集します。
Real-Time Workshopの用語では、組み込みターゲットは、深く組み込まれたシステムです。ラピッドプロトタイピングターゲットを組み込み(製品)環境で利用できることに注意してください。これは、ユーザアプリケーションで大きな意味をもつでしょう。
ラピッドプロトタイピングターゲット
ラピッドプロトタイピングターゲットには2つのクラスがあります。リアルタイムコードフォーマットを使うものと、リアルタイムmallocコードフォーマットを使うものです。これらは、メモリの割り当て方法が異なります(スタティックとダイナミック)。ほとんとのラピッドプロトタイピングターゲットは、リアルタイムコードフォーマットを利用します。
異種ラピッドプロトタイピング 環境は、最終の製品ハードウェアと異なるラピッドプロトタイピングハードウェア(Intel-80x86/Pentiumや同様のプロセッサのような)を利用します。たとえば、Intel-80x86/Pentiumまたは同様のプロセッサは、最終的には固定小数点Motorolaマイクロコントローラで展開されるシステムのラピッドプロトタイピング中に用いられます。同種ラピッドプロトタイピング環境は、ラピッドプロトタイピング環境が最終製品システムに近いため、不確かさを取り除きます。しかし、ユーザ固有のハードウェアに対するターンキーシステムは、存在しない場合があります。この場合は、ユーザは異種ラピッドプロトタイピングに対して既存のターンキーシステムを利用することと、同種ラピッドプロトタイピング環境を作成することの長所と短所を比較検討する必要があります。
ラピッドプロトタイピングターゲットの中には、Real-Time Workshopにバンドルされているものがあります。
Generic Real-Time (GRT) Target. このターゲットは、ERTターゲットと似ていますが、リアルタイムコードフォーマットを利用し、外部モード通信をサポートします。カスタムラピッドプロトタイピングターゲットの作成時の開始点として、あるいはワークステーション上での生成コードの確認のために設計されています。
Generic Real-Time Malloc (GRTM) Target. このターゲットは、GRTターゲットと似ていますが、リアルタイムmallocコードフォーマットを利用します。
Tornado Target. Tornadoターゲットは、リアルタイムコードフォーマットを利用します。ランタイムインタフェースファイルのセットが、業界標準のリアルタイムオペレーティングシステムVxWorksでのモデルの実行用に提供されています。Tornado targetは、シングルタスク、マルチタスク、ハイブリッド連続時間および離散時間モデルをサポートします。
Tornadoランタイムインタフェースとデバイスドライバファイルは、他のリアルタイムオペレーティングシステム環境をターゲットとするときに開始点として用いることができます。ランタイムインタフェースは、グラフィカルデバイスによるパラメータチューニングやデータのモニタリングに対するデバッグ機能を利用することができる、外部モードをサポートします。
DOS Target. DOSターゲット(例題としてのみ提供されています)は、リアルタイムコードフォーマットを利用してDOSオペレーティングシステムを起動しているPCをリアルタイムシステムに変えます。このターゲットは、生成コードの実行のためのランタイムインタフェースファイルを含んでいます。このランタイムインタフェースは、生成コードを実行し、他の割り込みを取り扱うために、割り込みサービスルーチンをインストールします。DOSターゲットの実行中に、DOSオペレーティングシステムへのアクセスは行いません。デバイスドライバの例が提供されています。
The MathWorksは、DOSターゲットの代わりにReal-Time Windows TargetまたはxPC Targetをご利用になることを推奨します。DOSターゲットは、例題としてのみ提供され、将来的にはサポートは中止される予定です。
OSEK Targets. OSEKターゲット(例題としてのみ提供されています)によって、自動車業界標準のオープンリアルタイムオペレーティングシステムを利用することができます。このターゲットに含まれるランタイムインタフェースとOSEKコンフィグレーションファイルによって、アプリケーションの広範囲なOSEK環境への移植が容易になります。
Turnkey Rapid Prototyping Targets
Real-Time Windows TargetおよびxPC Targetは、Real-Time Workshopのアドオンプロダクトです。これらのターゲットは、Intel 80x86/Pentiumまたは互換のPCをリアルタイムシステムに変えます。両者とも汎用の市販のI/Oカード(ISAおよびPCI)をサポートします。
ターンキーターゲットシステムを使うと、MathWorksのソフトウェアとコンパイラをインストールし、I/Oカードを挿入するだけですみます。それからI/Oカードに対して外部デバイスと接続されたリアルタイムシステムとして、PCを使うことができます。
Real-Time Windows Target. Real-Time Windows Targetは、one-box solutionとして参照されることがあります。これは、Simulinkと生成コードが同一PC上で実行されるからです。The MathWorksは、Windows NTまたはWindows 95/98を起動しているのと同じプロセッサ上で生成コードを実行できるランタイムインタフェースを提供しています。コードは、厳しいリアルタイムで実行され、CPUサイクルのないときにWindowsが実行されます。多くのI/Oデバイスがサポートされています。
Real-Time Windows Targetを使って、1台のPCをラピッドプロトタイピングシステムに簡単に変えることが可能です。これは、2台目のPC(xPC Targetを使う)を持ちたくないような状況のときに最適です。この環境は、教育や研究の初期段階に対して非常に適しています。
xPC Target. xPC Targetは、two-box solutionとして参照されることがあります。xPC Targetは、Simulinkを実行するホストPCと、生成コードを実行するターゲットPCの2台のPCが必要です。ターゲットPCは、非常にコンパクトなリアルタイムオペレーティングシステムを実行します。このターゲットは、Ethernetネットワーク接続またはシリアルケーブルによって、ホストからターゲットへの外部モード通信をサポートします。
ターゲットPCは生成コードの実行専用なので、xPC Targetは性能の向上とシステムの安定性の向上の両方を実現します。
xPC Targetは、限られた製品環境においても役立ちます。PCハードウェアのコストを考えると、xPC Targetをローボリュームまたはハイエンドの生産システムに展開することが合理的である場合があります。
Rapid Simulation Target
Rapid Simulation Target (RSIM)は、ユーザのホストコンピュータ上の非リアルタイムの実行に対するターゲットファイルで構成されます。RSIMを使って、Real-Time Workshopを使うことができます。これは、モデルのリコンパイルの必要なしに標準のMATLAB MAT-ファイルからバッチパラメータチューニングや、新規のシミュレーションデータ(信号)をダウンロードすることが可能になる、高速のスタンドアロンシミュレーションを生成します。
生成コードの速度は、モンテカルロシミュレーションに対してRSIMを最適にします。RSIM targetを使うことにより、生成コードは、標準のMAT-ファイルとのデータのやりとりが可能になります。RSIMは、シミュレーションの開始時にMAT-ファイルから新規の信号とパラメータを読み込みます。
RSIMを使って、ホストコンピュータまたは他のコンピュータ上でスタンドアロン、固定ステップシミュレーションを実行することができます。100個の大規模シミュレーションを実行する必要がある場合、RSIMモデルコードを生成し、それをコンパイルし、実行ファイルを10台の同一のコンピュータで実行することができます。RSIM ターゲットを使って、モデルパラメータや信号データを変更し、コンパイルされたシミュレーションを利用することで速度が大きく改良されます。
S-Function と Accelerator Targets
S-Function Target は、モデルをSimulink S-ファンクションコンポーネントに変換する機能を提供します。このようなコンポーネントは、大規模モデルで利用することができます。これにより、シミュレーションの高速化やコードの再利用が可能になります。同じモデル内に、各S-ファンクションが独立のデータ構造体を保持する複数の同一のS-ファンクションを含めることができます。所有するソースモデルの詳細を公開しないでS-ファンクションコンポーネントを共有することも可能です。
Accelerator Target は、S-ファンクションがモデルに対して作成される点でS-Function Targetと似ています。Accelerator Targetは、生成したS-ファンクションがバックグランドで実行される点がS-Function Targetと異なります。すべての既存のシミュレーション機能(パラメータ変更、信号の可視化、S-ファンクションのサポート等)を保持しながら、シミュレーションを高速化するために提供されています。
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